モモンガ着物羽織をリバーシブルで仕立てることはできませんか?というセミオーダーメイドのご依頼を頂戴しました。
襦袢地を裏地に使わず、色留袖と訪問着で仕立てた通年着られる3wayのリバーシブルモモンガ着物羽織のご紹介です。
着物データ
【左:薄桃の色留袖】
牡丹と菊、梅などがあしらわれた繊細で上品な絵が美しい色留袖です。染め抜き3つ紋。
【右:青鼠色と江戸紫の訪問着】
薄桃色の扇の中に花や蝶が描かれた個性的な配色の訪問着です。
【家紋】桔梗
桔梗紋:桔梗の五弁の形を図案化。土岐家の代表家紋で、同族の明智光秀が水色の桔梗紋を使用した。
引用:家紋の本
2点には一見共通点がないようにも思いますが、薄桃色と江戸紫が双方の橋渡しをしてくれる形になりました。
薄桃色の色留袖は通常使用には可愛らしすぎるかもしれないので、裏地でというご要望から始まったのですが、結果的にどちらも表として着るのに引けをとらない仕上がりになりました。
柄部分詳細
初見から繊細な仕事に目を奪われました。強い色は一切使われておらず、淡い色だけで丁寧に描かれています。
ベースカラーはコーラル系のベージュピンクなので大人の女性でもてらいなく着ることができ、幅広い肌色になじみます。
全体のカラーは落ち着いた青鼠色ですが、日本の色としてお馴染みの江戸紫が全体を引き締めており、個性的でエッジのきいた訪問着です。
扇の中には松、梅、蝶、桔梗、菊など様々な植物が描かれており、メッセージ性を感じる作品です。
リバーシブル制作に向く着物
今回はどちらもしっかりとしたコシと艶のある絹ちりめんだったことが成功のカギでした。
一方が柔らかく、薄い場合には付き合わせた時に重さで予期せぬツレがでてしまう不安もあるので、リバーシブルで制作する場合には素材同志の厚みの確認が重要です。
理想は同じくらいの厚み、重さのものです。
着物の状態では裏地に使用している生地によっても着用感が変わりますので、実際に制作に向くものであるかは、解き洗いしてみないと判断がつかない場合もあります。
今回はどちらにも同系色の色がはいっていたことで、統一感のある仕上がりになりました。
KIMONOclipは通常2個1組で制作するのですが、どちらの色にも完全にマッチさせるというのは難しく、スタイルによって使い分けて頂けるように3個1組として制作させて頂きました。
つなぎパーツはカーネリアンとアゲートで制作したオレンジとパープルの2本です。天然石は様々なカラーがありますので、着物に合わせた色味で制作可能です。
モモンガ着物羽織用には着心地の為に短めのデザインをご提案しております。
長さの調節、天然石のご希望をお伺いできますので、制作時にお気軽にお問合せ下さい。(要問合せ)
モモンガKIMONO羽織スタイル
今回のスタイリングは表裏どちらともなじみの良い同系色のベージュ系を選びましたが、デニム着物などの濃紺・黒系全般に似合う色味なので普段着としてのシーンにはこちらの色味が活躍しそうです。
大人っぽくシックなベージュ系ピンクは血色がよく見える色です。
同系色はもちろん、白系や柄物にも合うので、華やかなシーンのスタイリングにも合いそうです。
KIMONOclipの片面には青鼠色の着物からとった扇のピンクを使用しています。
ピンクには実に様々な色相があり、青鼠色に使われているピンクはやや青みががっているのに対し、色留袖のピンクは赤系統なので、つなぎパーツのカラーで全体の色相を整えています。
グラデーションのバランスによっても見え方が変わってくるので、お気に入りのつなぎパーツなどを取り入れて頂き、スタイリングを楽しんで頂くのもオススメです。
ショールスタイル
正絹のちりめんはしっかりとした密度でありながらとても軽いので、ショールとして使用する場合にももたつき感がありません。
特に留袖は多くの場合身頃下部分にボリュームのある絵付けになっておりますので、畳んで使用して頂くことで柄部分を引きたてる着こなしをして頂けます。
小さく畳んで持ち運べます
表裏の見え方
和遊湘南では、袖口などミシンでステッチをかけるとニュアンスが強くなってしまう部分にはできるだけ手まつりを取り入れる等、オーダーメイドならではの手作業を心がけております。
また、モモンガ着物羽織は着物の柄をそのまま楽しんで頂けるのも醍醐味なので、お客様の裄を加味しつつ、なるべく丁寧に柄合わせをさせて頂いております。
両面着られるリバーシブルの良さはシーンや季節によって幅広く使い分けできることのほかに、袖口から除くカラーの配色が差し色になり、スタイリングに彩を添えてくれることです。
お客様のお着物で制作に入る前に数点試作しましたが、表裏の印象がガラリと変わる生地で制作すると、火消し半纏のような視覚的な面白さもあり、オススメです。
着物にはそれぞれにストーリーや季節のモチーフが散りばめられており、お客様の大切なお着物を見せて頂くことはとても楽しく勉強になる時間です。
できるだけ1着のなかにあるストーリーは残さず使い切りたい思いがありますので、ご希望頂けましたら、三重仮紐、マスクなども同時に制作可能です。