
お母様が残された、藤色の着物
今回は、お母様が残された着物3点をお預かりして、コートやバッグ、ストールへリメイクした制作のお話です。
お預かりしたのは、絹の袷の小紋が1枚、一重のウールの着物が1枚、そして道行コートが1枚。
どれも藤色から赤紫系の色合いが印象的で、何枚か並べてみると、
「お母様は、こういう色がお好きだったのだな」
と感じるような着物でした。
お客様から伺ったお話では、ご本人とお二人のお嬢様の3人で、これらのお母様の着物を身につけられるようにしたいとのことでした。
お嬢様からすれば、おばあ様にあたる方の思い出の着物です。
3人とも体格が比較的近いということでしたので、できあがったものを家族で共有して着ることもできます。
そんなお話を伺いながら、どのような形にしたら、この着物をこれからも楽しんでいただけるだろうと考えました。
とても汚れのひどかった道行コート
今回、特に印象に残っているのが、道行コートです。
かなり汚れがひどく、経年による変色も目立っていました。

表だけでなく裏側にも汚れが出ていて、焼けも見られました。
正直なところ、最初に見た時は、
「これはリメイクするのは難しいかもしれない」と思いました。
汚れを落とすことができない部分が多くありそうで、一度お客様にお返しすることも考えました。
ところが、お客様から、「何かできるものはありませんか」とお話をいただきました。
そこで、状態を考えると、トートバッグやポーチなど、汚れの少ない部分を選んで使うものであれば制作できそうだとお伝えしました。
すると、「それでもいいです」とお返事をいただきました。
そこから、今回のリメイクが始まりました。
着物を、家族で着られるコートに
大まかなデザインについては、ご希望を伺いながら決めていきました。
今回制作したのは、秋口や春先などに着られるような、ワンピースコートのようなデザインです。
お客様ご本人とお二人のお嬢様が着られるよう、それぞれのご身長やサイズなどをメッセージで伺いながら制作しました。
今回は、直接お会いしてお話をしたり、お姿を拝見したりして進めたご依頼ではありません。
メッセージで何度かやり取りをしながら、ご希望を確認していきました。
そして、実際の着物を手に取って、生地の色や柄、状態を見ながら、この雰囲気なら、こんな形が似合いそう」と考えていきます。
大まかなご希望を伺ったうえで、細かな部分についてはお任せいただくこともあります。

残った布も、ストールに
コートなどを作ったあとに残った生地があれば、ストールも欲しいとのご希望をいただきました。
そこで、残った布を見ながら、どのように組み合わせられるかを考えました。
今回預かった着物は、藤色から赤紫系という共通した色合いがありました。
それぞれ別の着物ではありますが、色の雰囲気にまとまりがあったため、残った生地を組み合わせても自然につながります。
そこで、いくつかの布を組み合わせ、パッチワークのように仕立ててストールにしました。

何枚かの着物を一緒にお預かりしたからこそできたリメイクです。
それぞれの着物の色や柄を活かしながら、ひとつのストールとして新しい表情を作ることができました。
思い出の着物を、バッグにも
そして、状態の特に気になった道行コートは、バッグにしました。
もともとの着物には、長い年月の中でついた汚れや傷みもあります。
すべての部分をそのまま使えるわけではありません。
だからこそ、状態を見ながら使える部分を選び、どこをどのような形にするかを考えていきます。
今回も、道行コートの中から使える部分を選び、バッグとして形にしました。

着物の雰囲気を残しながら、今の暮らしへ
今回の着物は、昭和の後半から平成初期にかけて着られていたものではないかと思います。
古いものではありますが、色や柄にはどこかモダンな雰囲気がありました。
そのため、コートやバッグに仕立ててみると、今の服装にも合わせやすい、素敵なものになったと思います。
特に藤色系の色合いが共通していたことで、3枚の着物それぞれの個性がありながら、全体としてもまとまりを感じる仕上がりになりました。
5月のお届けで、これから暑くなる時期でしたが、お客様からは、「とても良かったです。寒くなって着るのがとても楽しみです」というお言葉をいただきました。
その言葉を聞いて、私もとても嬉しくなりました。
メッセージでやり取りしながら進めるリメイク
和遊湘南の着物リメイクでは、お客様と何度かやり取りをしながら制作を進めることがあります。
今回も、メッセージでご希望を伺いながら進めました。
お客様のお姿を拝見しているわけではありませんでしたが、ご身長やサイズ、ご希望を伺い、預かった着物を実際に見ながら、「この生地なら、この形が良さそう」「この部分はこう活かせそう」と考えながら形にしていきます。
残った生地をどう使うかなども、その時の布の状態や量を見ながら考えています。
お客様とのやり取りの中で、大まかな形を決め、細かな部分はお任せいただく。そんなふうに、一緒に相談しながら進めていくリメイクもあります。
「着物として着ない」からこそ、できること
思い出の着物は、そのまま置いておくだけでも、お母様のことを思い出す大切なものだと思います。
けれど、「着物としてはもう着る機会がない」「しまっておくだけではもったいない」と思うこともあるのではないでしょうか。
そんなときに、コートやバッグ、ストールなど、今の暮らしの中で使えるものに形を変えるという方法があります。
今回のように、ご本人だけではなく、お二人のお嬢様も一緒に使える形にすることもできます。
お母様の着物が、今度は娘さんやお孫さんの世代へ。形を変えながら、家族の中で受け継がれていくのも、着物リメイクのひとつの楽しみだと思います。

思い出の着物を、これからも楽しむために
今回お預かりした3枚の着物は、コートやバッグ、そして残った生地を組み合わせたストールになりました。
汚れや焼けのある着物もありましたが、状態を見ながら使える部分を選び、それぞれの生地を活かすことで、いくつかの形にすることができました。
何枚かの着物をお預かりしたことで、それぞれの色や柄を組み合わせられたことも、今回のリメイクの良かったところです。
お母様がお好きだった藤色から赤紫系の色合いが、形を変えて、これからご家族の暮らしの中で使われていく。
そんなお手伝いができたことを、私も嬉しく思っています。
「母の着物を何かに作り替えたいけれど、何ができるのか分からない」
そんな場合も、まずは着物の状態や枚数、柄や生地を見ながら、一緒に考えていくことができます。
和遊湘南では、お手持ちの着物や思い出の布を見ながら、今の暮らしに合わせたリメイクをご提案しています。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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