帯仕立用の帯芯、綿100%の三河帯芯について/洋服生地を使った半幅帯制作の地の目についての記述

半幅帯用布地(裏地)と使用芯地

カジュアルに装えて流行を取り入れやすい「半幅帯」は近年着物のスタイリングで人気のアイテムです。

かねてよりお客様からご相談を受けていたこともあり、和遊湘南でもセミオーダーメイドでの半幅帯の制作を開始致しました。

このページでは半幅帯の制作に使用する綿100%三河帯芯の厚みによる使用感と、半幅帯制作時に必要な洋服用生地等の地の目、必要メーター数について検証した内容を記述します。

半幅帯の制作方法は様々あり、このページの記述も個人的な実験と検証の1つの結果になります。また、当ページの記載内容は常に更新しておりますので、あらかじめご了承ください。

目次

制作に必要な長さと使用可能な表地

半幅帯の一般的な長さ

帯の長さは3.5~4.3m(お好みによって変更)程度です。体系や結び方によってベストな長さが変わってきます。

4.3m以上の長さでも制作できますが、自装(自分で着物を着る事)の場合には4.3m程度までが扱いやすいように感じます。デザインや結び方によって自由に決定できる部分です。

表地について

帯は耐久性が必要な部分もあり、シワになりやすいものや極薄手、または極厚手素材は締めやすさの観点から考えるとあまり制作に向きません。

また、次の項目でも説明致しますが、生地には「地の目」があり、帯の制作でもタテ・ヨコの地の目方向が重要です。厚みや手触りに関しては、お召しになる方の好みによる所が大きく一概に正解があるとは言いにくいです。

厚めの帯の方が着用時の見た目が好きだという場合もあると思いますし、普段着用に兵児帯感覚で楽に締められる方が良いという場合もあると思います。
デザインの配置もそうなのですが、半幅帯はかなり自由が利く分、ご自身が扱いやすい物を見つけていくのが重要です。

半幅帯の制作に必要な布の分量(地の目・柄の方向について)

半幅帯に使用される布地(表地)は様々で、プリントのコットン生地からゴブランのような厚手の織物まで、多種多様です。表地は主に[柄]をメインにお選びになる方が多い半面、帯としての機能性も必要となります。

例としてハンドメイドでも人気の高いmodafabric(william morris)の「いちご泥棒」を使用して、ご自身で生地を購入される際に注意が必要な縦横の柄がはっきりとしたテキスタイルの地の目について解説します。

今回使用しているのは薄手コットン生地です。
4mの長さで制作すると仮定して解説します。
※様々な素材で同柄が販売されておりますので、巾や生地の厚みは小売店で確認してください。

地の目について (プリントパターン生地)

半幅帯プリント生地(例イチゴ泥棒)柄解説_和遊湘南

基本的に帯は長尺の向きを[タテ地]として制作します。

その為、無地やところどころに柄があるもの、繰り返しても違和感の無い単純な幾何学柄等と違い、比較的視認性の高い縦横のハッキリした柄を使用する場合には希望される配置によって購入メーター数が変わりますので、特に注意が必要です。

半幅帯プリント生地(例イチゴ泥棒)柄解説_和遊湘南

このように、仮にこの柄をタテ地で配置しますと鳥の柄が横向きになってしまいます。

また、インテリア用の生地等であっても生地幅は概ね120cm幅(広くても140cm幅)程度までが一般的なので、4mでお作りしたい場合に継ぎ目のない帯を作ることはできません。

半幅帯プリント生地(例イチゴ泥棒)柄解説_和遊湘南

帯は前に見える胴の腹部分を起点とすると、内側になる一重目巻き部分は見えなくなりますので、ハギは入るものと考え、別の生地を切継ぎして制作するという手段もあります。
どの柄をどのくらい見せたいかを見極めて購入してください。

難しく感じる場合には、実際に帯をしめてみて、(長さのある布でもいいです)その部分に柄が欲しいのかピンなどをうって計測してみる方法も考えられます。

自分が使うことをメインに制作される場合は、ご自身が一番見せたい部分に柄が出るように考えて、その分だけ生地を買えばロスが少なく済みます。
どうしても生地が余ってしまう場合には、両面仕様にしてみたり、お友達と一緒に作るというのも良いかもしれません。

半幅帯仕立て解説画像_和遊湘南
生地分量と地の目の解説(イメージ)
  • 縦横柄のはっきりしたパターンを横地で使用する場合は必ず数か所のハギが入ります。柄合わせをする場合、必要メーター数が変わります。
  • 無地またはあまり柄の向きが気にならないものを縦地で使用する場合は、ハギを入れると購入メーター数を抑えられます。

強度や布にかかる負担を考えると縦地を使うのが望ましいですが、半幅帯の場合は柄優先で考え、使いたい部分を横地でとる場合もあります。

裏地について

強度や結びやすさの観点から、ハギの無い状態で使うのがオススメです。
用尺、地の目の考え方は表地と同じです。

裏地と帯芯・仕立て方法について

使用する芯と仕立て方法

ここでは帯仕立用の帯芯/三河帯芯(薄手/中厚手/厚手 綿100%)を、解き洗いした正絹着物反物を表、中厚生地を裏地として使用した場合を解説します。

仕立て上がりの綺麗さと締めやすさを両立できるよう、手持ちの様々なタイプの帯をほどき、芯のおさまり方と処理を検証しました。この縫製方法と芯の貼り方は現時点での当方独自の解釈によるものです。

今後制作していく中で適宜変更する場合がございます。
帯芯は洋服用のものとは違い、反物で巻で売られています。
表地・裏地は柄によって横地を使用することもありますが、芯は必ず縦地で継ぎ目なしに使用します。
帯芯の幅は約34cmですのでこれを縦半分に切って使用します。

①薄手芯

帯薄手芯_和遊湘南
薄手芯

薄手芯は縫い代まで芯を貼っても縫い代が表に響きずらいので、両端をミシンで仕立てたい場合に対応できる厚みです。
表地が薄い場合にはやや心もとない柔らかさではありますが、兵児帯感覚の仕上がりになります。
リボン結びにお勧めの厚みです。

②中厚手芯

帯中厚手芯_和遊湘南
中厚手芯

縫い代まで芯を貼ると、やや帯端に縫い代と帯芯の厚みが出ますが、両端ミシン仕立て、アイロンで毛抜き合わせに整えても綺麗に仕上がる範囲です。
表地を中厚地にすると、比較的締めやすい一般的に売られているものに近い厚みの半幅帯に仕上がる印象です。

③厚手芯

帯厚手芯_和遊湘南
厚手芯

薄手、中厚のように縫い代まで通して芯を張ると縫い代の段差が表側に響きますので芯は帯幅のみにします。
芯の留め方は2通りあります。

  1. 芯の両端を縫い代に手まつりで留める。
  2. 片側を縫い代にミシン留めし、もう一方を手まつりで留める。

やり方の詳細はブログで紹介予定です。【執筆中】

半幅帯は芯の厚みや仕立て方法によって使用感に大きな差があるにも関わらず、画像のみでは仕様の違いがほとんどわからないものです。ミシン仕立ては縫製が早いのが何よりもメリットです。

使用感でいうと手まつりに比べると遊びの部分(糸のゆるみ)がないので、実際に使ってみると締めやすさに違いを感じるかもしれません。

とはいえ、地厚生地を長距離手でまつる工程はそれなりに時間と根気がいる作業です。

このページで紹介している帯芯自体の価格は薄手と厚手では500円程度の価格差ですが(販売場所による)、仕立てや生地によって価格が大きく変わるのはこの為です。

芯の厚みと仕立て方法の決め方

検証した結果、個人的には中厚表地×中厚の芯×中厚の裏地での制作が締めやすいものになり、オススメです。
どうしても使いたい柄の生地がある場合は厚手芯を使用して対応することもできます。
オススメできないのは伸びる生地です。

ストレッチ系の素材はしわになりにくい特性がありますが、基本的に帯は伸びるとうまく締めることができない為、推奨できません。
量販店などで売られるシーズンアイテムに付属の帯などは、ポリエステル繊維で発色の良いプリントが可愛いのですが、伸びやすい生地を使用している場合が多く、締めにくい傾向があります。

半幅帯用布地と使用芯地


今回は柄説明の為に制作希望の多いUSAコットンを地の目説明の題材に選びましたが、実際にはこれほど薄い生地を表に使用すると、1度締めただけでもかなりシワがついてしまいます。

シワになりやすい生地を使用した場合は着るたびにアイロンがけが必須という事態にもなりかねませんので、柄だけでなく使用した後の事も考慮して、お手入れの面でも安心感のある表生地を選ぶのがオススメです。

いちご泥棒柄の厚み別生地紹介

【コットンプリント生地
綿100%のシーチング、ブロード生地等の記載があり、単に平織りとされる場合もある。
コットンプリント生地はシーチングの場合が多い。

当ページの解説画像と同程度、柄が豊富でかなりの種類から選べますが、帯向きとは言いにくい生地です。袋物などの小物制作に向く扱いやすい生地です。

【オックスフォード生地】
柔らかく通気性にとみしわになりにくい斜子織(ななこ)の平織り

ここで紹介しているのは【ダマスクブラック】という黒系のカラーです。
他にブルー、レッド系などもありますので、好みに合わせて選んでください。

このくらいの厚みがあったほうが安心。
オックス系はオリジナルテキスタイルファブリックの制作もしやすい厚みと丈夫さ、縫いやすさのある生地です。

ちょっとひといき

ウィリアム・モリスの美しいテキスタイルは世界中で愛され、沢山のデザインがありますが、『商用利用可』という図案は実は多くありません。

テキスタイルを主に扱う販売店は、どの生地が商用利用可能であるか、サイト内に記載していることも珍しくありません。

近年のハンドメイド人気に伴って、モリスに関わらず多くのメーカーのオリジナルテキスタイルにはその布端(耳と呼ばれる部分)に、商用可or非商用とプリントされていることも増えました。

今回紹介している【いちご泥棒】という名称で親しまれるこの柄は、モリスの中で商用可なデザインにあたる為、販売されている製品の多くがこの柄なのは、そういった要素も含まれています。

着物地や帯地を使った制作例

着物反物の紬地等は中厚手芯または厚手芯

古い博多半幅帯は長さが短いものが多いですが、布を足して長くすると使いやすくなります。

この例は真ん中1か所に紬地を足したもので裏側黒地側には1本だけ継ぎを入れリバーシブル使いできるようにしました。芯は中厚手芯を手まつりしていますので表裏と芯とのなじみも良い仕上がりです。

ジャカード地と帯端切れ×中厚手帯芯

半幅帯仕立てイメージ
ジャカード地と帯端切れ×中厚手帯芯

こちらは金糸入りの洋服生地と黒地にラメが入った帯の解き洗い品を合わせたものです。
いくつかのパーツに切って表裏どちらが出ても良いように切り継ぎました。
こちらも中厚手芯を手まつり留めしたものです。

やわらかいものはリボン結びがきれいにでますし、金糸を使うと華やかでかわいい印象に仕上がります。
たれ部分は両面主役になるような柄を使うのもおすすめです。
着物のスタイリングは帯でうんと表情が変わります。

手軽に作れる半幅帯は、いくつあっても楽しい物です。
セミオーダーメイド制作にあたって、芯について、厚みや使用感に該当する情報があまりなかったため、ブログにまとめてみました。

ローチ幸

まだまだ検討中なので、記載内容も変化していくかもしれませんが、制作のお役にたてますと幸いです。

ご依頼受付中のデザイン紹介

和遊湘南では風神雷神の半幅帯のセミオーダーメイドを受付中です。
3.9~4.3mの間で、ご希望の長さをご指定頂けます。
切り替え部分の布地は在庫によって変わりますので、受付中デザイン一覧の半幅帯よりご確認下さい。

和遊湘南の風神雷神半幅帯
和遊湘南の風神雷神半幅帯
半幅帯用布地と使用芯地

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